インドでのダイヤの買い付け方法

2013年3月20日

僕は、ヒラオカ宝石に入社するまでは、東京の宝石の専門商社でバイヤーとして、海外からダイヤモンドやカラーストーンを買い付けして、国内のメーカーや小売店に卸す仕事をしていました。

異国の地で誰の助けも無く行う高額なダイヤモンドの買い付けは、リスクもある反面、良い結果につながった時には、何とも言えない達成感があります。

一般の方にはあまり馴染みもないかもしれませんが、
後輩が、初めてインドへの出張でダイヤモンドの買い付けに行く前に、僕の今までの体験からアドバイスをしたダイヤモンドの買い付け方法の書類が見つかりましたので、こちらの方にも記載いたします(^^)


買い付け初日は、現地(インド)でのマーケット調査に徹する。

調査もいろいろな工場から研磨されたダイヤモンドが集まるブローカー(仲買人)がいる場所ではなく、
工場直営のオフィスをメインに訪れる。(工場ではそれぞれ自社基準による品質わけを行っているので、その時のマーケットの価格変動がわかる)
そこで即購入ではなく、石をチェックして相手の言い値を聞く。


調査が終われば、訪問先で希望する商品を相手に伝える。(サイズ、品質など。価格についてはこちらから手の内を明かさない)


相手が用意した小さいサイズのダイヤモンドがたくさん入った名刺サイズくらいの包み紙(パーセル)を開く。


10粒くらいをランダムで選び、ピンセットでつまみ、ルーペを通してチェックする。
その内、半分以上が希望の品質でなければ、それをこれ以上はチェックしない。
(そのロット《グループ》が残り物の集まりの可能性が大)


もし、7粒くらいOKなら、さらに50粒くらいをランダムに選ぶ。
そして、○と×とにその50粒を分ける。
その分けた数を参考にして交渉のカードとする。


何%リジェクション(排除)して価格はいくらという風に交渉する。
必ず、自分の手の内は最後まで明かさない。

例えば30%リジェクションで500ドル/ctだったとしても、相手には50%のリジェクションで400ドル/ctと伝える。
そこからの交渉で最終的に自分の希望%、希望価格の手前で合意する。

40%、450/ctなら自分の希望が30%、500ドル/ctだったので、希望数値より10%も多くリジェクションできるのでより厳選して、50ドルも安く購入できることになる。

《交渉時の注意点》

・  相手は最初から良い品を出してこない。必ず試される。
もし気に入れば「いる」「いらない」の即答を避け、キープする。
そんな時、相手が買うか買わないか急か  すようだったら、十中八九、手をつけない方が良い。
焦った心理状況の下では必ず失敗する。

・  相手とは必ず握手(フレンドリーになればさらに肩をたたく)などの、ボディタッチ
によるコミュニケーションをとる。親近感が増すことになる。

・  民族、宗教に関しての話は一切しない。相手のポリシー、思想に関する議論は行わない。
思わぬ軋轢(あつれき)を生むことになる。

・  こちら側の断る理由は言わないこと。そうしなければ相手は断れない理由を見つけてくる。
『私の基準に合わない』という風に伝えて、詳しくは語らない。

・ 相手が値段をいくらだと思うか聞いてきても、それに答えず他の質問をする。
自分の手の内を相手には見せない。
「いくらだと思う」の質問に対して、「何%までリジェクションできる」

・  値段は絶対に受け入れられない値段からスタートする。
そうすればこれ以上は無理という風に相手が『底』を見せる可能性が高い。

・  値段に対してはこれと決めたら、妥協しない。
一つ妥協してしまうと全部妥協する恐れがある。

・  もし値段が自分の希望通りで相手が納得しなければ、リジェクション率、購入量にて相手に妥協させる。         (値段一方向だけを見るのではなく、いろいろな方向から交渉する)

・  交渉の末、値段が決まらなければ、相手には今度はそちらの希望にすると花を持たせて
クロージングに導く。今回の交渉に全てを注ぐ。
次回はまたマーケットが変わっているので、その時の状況に合わせる。

・ 必ず心に余裕を持つ。最後に慌てて買ったものは余裕がない分だけ判断を誤る結果となる。